自らの命を刻むことで遺伝情報を守るテロメア
なぜ、人は時の移ろいとともに老い、病み、そして死を迎えるのでしょうか?
そしてそれらはすべて生まれる前から遺伝子の中にプログラムされていたのだとしたら…
そうなんです。人の寿命は細胞レベルであらかじめプログラムされており、大事な遺伝情報を子孫に正確に残すために、細胞は自らの命を縮めます。そして、子孫の生存・繁栄のために自らの命を絶ち、個体に死をもたらします。そんな強い意思が細胞の中には秘められているのです。
これから少し遺伝子のお話をしなければなりません。でも、そんなに顔をしかめないでください。ちょっと我慢して読んでほしいのです。とても大事な話ですから。人は、いいえ生き物はなぜ生まれ、生き、死んでいくのか、その答えが見えるのではないでしょうか。
右の図で染色体とDNAの構造だけちょこっと確認しておいてください。
細胞は分裂を繰り返します。そのたびに遺伝情報を司るDNAをコピーします。ところが、DNAの先端にあるテロメア(聞いたことないでしょ?)と呼ばれる器官だけは複製されず、分裂を繰り返すごとにわずかづつ短くなります。
テロメアの末端が短くなるにつれ、細胞の分裂は鈍化し、やがて分裂を停止してしまいます。『細胞の死』を迎える訳です。
なぜ、細胞にはこのような器官が備わっているのでしょうか? テロメアには大事な遺伝情報の保護という役割があります。細胞は分裂する時、DNAも一緒に複製されますが、この際、DNAの端部が欠けたり、また他のDNAとくっついてしまうと、大切な遺伝情報が損なわれます。
つまり、同じ細胞が複製されなくなったり、子孫に受け継げなくなったりします。これは生物にとって由々しき問題ですよね。
テロメアはDNAの持つ遺伝情報が確実に受け渡しされることを見守っているのです。自らの『命』を切り刻むことによって。細胞にはこのように老化へ、そして死へ向かうプログラムが組み込まれているのです。
テロメアのイメージを理解するには、とてもいい絵本があります。森川幸人氏著の
「テロメアの帽子、不思議な遺伝子の物語」です。
遺伝子が主人公の何とも不思議な味わいの絵本です。テロメアの概念がとてもよく表現され、生と死を考える上で暗示的です。お勧めします。
